ライフスタイルから来るファッション:「Lightning増刊2nd」


オレが毎月「Men's CLUB(メンクラ)」を購読しているのは既に何度も書いているけど、ココ最近のメンクラの姿勢がどうにもこうにもイヤになってきつつある。
従来「社会人の身嗜みとして節度のある格好をしましょう」というコンセプトだったハズが、ココ数ヶ月で「高級品を買い揃えてカッコつけてモテましょう」という、あまりにも即物的すぎるコンセプトに取って代わられている感じがしてきてしまっている。
「ファッション=身嗜み」という精神と、そこから生まれる節度を保った上品で硬派なスタイリングに惹かれていたオレからすると、今のメンクラの明らかな俗物っぷりはとてもじゃないけど相容れない。
かといって、メンクラ以外の雑誌でオレが読んで「コレは!」と惹き付けられるものは無いんだよね。
「メンズノンノ」「POPEYE」はあまりにもモード&アーティスティックすぎて、リアルクローズ的な情報を求めるオレにとってはあまりに「リアル感」が無さ過ぎる。
「FINEBOYS」はオレの年齢からするとあまりにも若すぎるし(「10代からの脱オタク」なら丁度良さそうなんだけど)、逆に「LEON」はあまりにもオッサン過ぎ(しかもギラギラし過ぎ)てダメだ(ネタとして読む分には面白いんだけどね。意外にスタイリングはしっかりしてるし。)。
カタログ雑誌としての「Begin」は面白いんだけど、頭の悪い煽り文章が下品すぎて好きではないし、「Gainer」は「モテ!モテ!」の連呼があまりにもイヤミったらし過ぎてイヤだ。
「Men's JOKER」は、一時期は結構面白かったけど、そのうち”セレブ”の格好ばっかり追うようになっていってだんだん「リアル」な感じが無くなってきてしまった。
結局様々な雑誌をとっかえひっかえして最後に残ったのがメンクラだったわけなんだけど、その最後の砦がこんな体たらくじゃ、今のオレに合うような雑誌が無くなってしまう。
過剰な「モテ」「女子ウケ」に走らず、スタイリングや文章に適度な「節度」を感じて、モードではなくむしろリアルクローズ的な情報を扱っていて、なおかつ30代のオレがマネしても違和感の無い、そんな雑誌は無いだろうかという気分の時に出会ったのがコレ。




「Lightning増刊2nd」


アメカジ雑誌の代表格「Lightning」の増刊号的な位置付けの雑誌。

「男の1番(ファースト)がビジネスでありビジネススーツであるなら、セカンドは休日であり、カジュアルファッション。つまり、二の次である休日のカジュアルファッションで「格好いい大人」になるためのファッション誌です。」

というコンセプトの元、普段は社会人として働いているオトナたちの「休日カジュアル」に焦点を当てている雑誌で、そのコンセプト通り「Lightning」がブリバリなアメカジ&アメリカンカルチャー雑誌なのに対し、コチラは適度にトラッド風味を加味した、オトナっぽい上品アメカジという感じだ。



オレがこの雑誌を非常に気に入った要因は、そのコンセプトだった。
オレがファッションに求めている「リアルクローズ」という要素が、ここまで詰まっている雑誌はそうそうない。
ソレを最も良く表現しているのが、モデルの人選。
ハッキリ言ってダサい(笑)!
メンクラの櫻井貴史やGainerのKen、あるいはLEONのジローラモといった、顔も体も整ったイケメンモデルと比べて、2ndのモデルは正直言ってあまり格好良くない。
足も短いし、顔もフツーのオッサンだし、チビ、デブ(太め)、ヒゲのオンパレード。
でも、だからこそバツグンに「リアル」だ!
世の中全ての男たちが雑誌モデルや”セレブ”並にカッコいいわけがないのは当たり前(彼らは「カッコいい!」を生業にしているのだから当然だ)。
だからこそ、多くの「どこにでも居そうな(さほどイケメンでもない)人々」をモデルにして、そういう人々に対して提案する2ndのスタイルは非常に取り入れやすく、また参考にもしやすい(イケメンなら何着たってカッコイイに決まっているんだから)。
そういうコンセプトって、今までありそうでなかった物だ。
オレが2ndに惹きつけられたのは、そういった「フツーの人を大切にする」姿勢だった。



もう一つオレが気に入っているポイントは、巻末のスナップ写真。
写っている人々の格好は大体アメカジ系なんだけど、みんな笑顔がステキ過ぎる!
満面の笑みでカメラに写っている彼らの嬉々とした表情からは「楽しくて楽しくて仕方ないぜ!!」という、まるで人生を謳歌するかのようなポジティブオーラが出まくっている。
モードだかなんだか分からないような奇妙キテレツな格好をして、取り澄ましたような表情でカメラに向かっている、あるいは微妙に目線を逸らしてカッコつけてる人々ばかりの他雑誌のスナップとはエラい違いだ。
彼らの表情からは、「カッコつけないとナメられる」という強迫観念や「ダサいアイツらとは違うんだぜ」というナルシズム、そしてその根底にある「カッコつけないとカッコ良くなれない」というコンプレックスから来るマイナスオーラが滲み出ているように感じる(余談だけど、「オシャレセレブ」として名高い堂本剛の格好も、オレの目には「足が短くて背が低い」という自分の肉体に対する強烈なコンプレックスを覆い隠すための格好のようにしか感じない。本当に自分に自信があるなら、もっとシンプルな格好をするはずだ)。
でも、2ndのスナップからはそんなジメジメした感じは受けない。
その笑顔には、他人に対する”拒絶”がない。
取り澄ましたような表情で他人を”拒絶”している人々とは、天と地ほどの差だ。
みんなファッションを、人生を、そして”自分”を楽しんでいる。
「ファッションは服だけで完成される物じゃない」というのがヒシヒシと伝わってくる。
こういうのが、本当に「中身のある」ファッションなんだろうなぁ。



オレが「ファッション=ライフスタイル」と感じたのも、そういった2ndの影響が大きい。
例えば「旅スタイル」というテーマを扱うにしても、山に行くのか、海に行くのか、街に行くのかでスタイルは変わってくる。
「街に出る」のも、例えば歩いて行くのか、自転車で行くのか、スケボーに乗るのか、自動車を使うのかで、やはりその選ぶ服も変わってくる。
2ndでは、そのような視点で服を選んでいる。
いわば「目的別」のファッション。
まずは「目的」ありき、服は後から考えるという方法論だ。
だから、そこで選ばれる服は極めて実用的であり(まさにリアルクローズ)、そしてそんな「何をするのか」、つまりは個々人の「ライフスタイル」こそがそのファッションを決めるという、それが2ndのコンセプトなわけだ。
コレにはオレも「ナルホド!」と思った。
常日頃から「モテ服」とか「女子ウケ抜群!」とか、そういった即物的なコンセプトに辟易としていたオレにとっては(そしてソレは、オレ自身の非モテ経験からくるコンプレックスからなんだけど)、2ndの提唱する「何をするのか=ライフスタイルから来るファッション」というコンセプトは非常に胸に落ちたのだ。



ファッション雑誌を「華やかさ」や「夢」を売るものだと定義するなら、正直2ndは範疇じゃない。
でも、ファッション雑誌を「実用誌」として捉えた場合、2ndはその最たる物だと思う(かつてのメンクラがそうだったように)。
「目的」のファッション、「何をするのか」から来るファッション、「ライフスタイル」から来るファッション。
そしてそのライフスタイルを体現するのは、イケメンでも何でもない、極々「普通」のオトナであるというコンセプト・・・。
そこから生まれてくる「リアル感」こそが、2nd最大のオリジナリティだ。
メンクラがおかしな方向に向かっている今、2ndは何があってもこのコンセプトを貫き通して欲しい。
そんな抜群の「リアル感」こそが、2ndの「生命線」なのだから。



そしてオレも、2ndを読む度に「誰でもない”自分”を楽しんで、生き生きとしたライフスタイルを体現したい」という思いを強く感じるようになっている。
ちょうど、2ndのスナップ写真コーナーで満面の笑顔を振りまいている、あの人々のように・・・。