脱ヲタと服ヲタの奇妙な関係

参考
【2ch】脱ヲタしたのに自己満足で服着るようになった
【Elastic】服オタなのに「ダサい」と言われる理由



「オタクが脱ヲタして服オタクになった」とはよく聞く話。
そして、オレも全くその通りの道を歩んでいる。
でも、同じ「服オタク」でも2通りあるんじゃないだろうか・・・と、最近思う。



まず1つはデザイナーやコレクション、モード方面を追いかけるオタク。
ある特定のデザイナーやブランドに心酔したり、あるいはその服やデザイナーの持つ「デザイン」や「思想」に共鳴するモードマニア方面へと進んでいくパターン。



そして2つ目は「モノマニア」方面へと行くパターン。
服という「モノ」が好き、服という「モノ」の持つ背景や歴史が好き、その服の持つ「歴史」を着るのが好き・・・



で、オレは完全に後者。
合わせ方云々よりも、その「モノ」が欲しいと思ってしまうパターンが多い。
例えば、ポロシャツならラコステフレッドペリーやラルフローレンの”モノ”。
ボタンダウンシャツならブルックスブラザーズにJプレス、ラルフローレン、あるいはインディビジュアライズドシャツやアイク・ベーハー等のアメリカンファクトリーブランドの”モノ”。
ズボンはリーバイス501やビルズカーキのM2チノという”モノ”。
靴はニューバランスやオールデン、レッドウィング等々の”モノ”・・・
つまりは「定番ブランド」の「定番モノ」志向。
まぁ、ありていに言っちゃえば「ビギン君」みたいなもんだ(ビギン君=雑誌「Begin」に載ってるような服や物を好む人々)。

       



そして、そんな「定番品」で固めたコーディネートの中に安物が入っちゃうと、途端に不安になってくる。
ユニクロ無印良品は、確かに個々の出来はナカナカいいのもあるんだけど、例えばJプレスのブレザーにビルズカーキのチノ、オールデンのローファーといった中にユニクロのBDシャツが加わると、途端に何かムズムズした感じがしてしまう。
モノの良さ悪さ云々じゃなくて、どうにも居心地が悪くなってきてしまうのだ。



かと言って、そんな「定番品」のクォリティ云々がハッキリと分かっている訳じゃない。
確かにユニクロのBDシャツとJプレスのBDシャツを見比べると、価格が高い分Jプレスの方が確かに出来はいい感じはする(特に襟周りのシャキリ感)。
でも、そんなの価格帯を比べたら一目瞭然なわけだし、2000円のシャツと10000円のシャツが同じような出来だったらソレこそ大問題だ。
フツーに納得して着る分にはドチラも全く問題はないわけで「ソレなら安い方がいいじゃん!」という意見に対する反論は、今のオレは持ち合わせていない。



でも、着てるオレの心理からするとやっぱり違うんだよな。
何と言うか、定番品には「定番」っていう安心感があるって言うか何て言うか・・・。



例えば誰かから
「何だよ、今時ポロシャツかよ〜。ダッセー!」
何て言われても
「何言ってやがる!コレはラコステだ!そもそもフランスのテニスプレーヤーだったルネ・ラコステが云々・・・」
等と言い返すことが出来る。
「そのジャンパーなに〜?オッサンくせー!」
何て言われても
「バラクータG9も知らねーのかよ!そもそもはゴルフ用に開発された物だけど、かのスティーブ・マックイーンフランク・シナトラが愛用して云々・・・」
と言い返すことが出来る。
コレがユニクロや無印だとそうも行かない。
やっぱり「ラコステ」なり「バラクータ(もっと言えばスティーブ・マックイーン。別段マックイーンのファンでもないんだけど・・・)」なりと言った「権威」のなせる業だ。




結局オレみたいなオタクは、ファッションが根差すための「カルチャー」も「スタイル」も持ち合わせていない(ソレはココでオレが書いた通り)。
となると、いきおい「コスプレ」に逃げざるを得ない(この辺も参考に)。
で、その「コスプレ」を尤もらしくするためには何がしかの「権威」が必要だ。
オレの場合はその「権威」が、「定番である」というコトと、ダサいと論われても言い訳できる「薀蓄」だった。
人によってソレは「クリス・ヴァン・アッシュの最新のコレクションは云々・・・」であったり「オレは服を着てるんじゃない!ギャルソンという”思想”を着てるんだ!」であったりするんだろう。
結局の所「根差す”カルチャー”も”スタイル”も無い」というコンプレックスを、受け売りの知識や薀蓄、あるいは尤もらしい「権威」で誤魔化しているだけに過ぎないんじゃないだろうか(そして、そうやってコンプレックスを誤魔化している人々は、自分たちが気に食わない種類の人間が自分の心酔する「権威」を身に付けていると「マルジェラが汚された!!」等と言って反発するのだろう)。



好きなものを好きに着て、ソレでカッコ良ければソレに越したことはない。
でも、今の今まで服に全く興味のなかった人間がそうそう簡単にそんな域に達するコトは不可能だ。
すると、いきおい「権威」という名の「言い訳」に頼らざるを得ない。
「ダサいオレが悪いんじゃない!○○の良さを分からないオマエが悪いんだ!」っていうね。
結局「自信がない」ってだけなんだけど・・・。




その意味で、脱ヲタから転じて服ヲタになった「モードヲタ」も「モノマニア」も、全く同列と言っていいのかも知れない。
結局、自分の中にあるコンプレックスを「服」や「モノ」で埋めてるだけ。
恐らくは、そんな「コンプレックスが見え隠れする」様が「オタク的」で「ダサい」のだろう。
ソレがその人の生来的な性格から来るのか、後天的な生育暦から来るのかは、今のオレじゃ軽々しく言えないんだけどね。
そもそも、オレ自身がそんな感じの人間やし・・・。