脱ヲタを実感する時

オレの友人の評判が芳しくない。



そもそも定職に就かずフラフラしていた彼をオレが口利きしてうちの会社に手伝いとして紹介したんだけども、その友人に対する社内の評判がどうも宜しくないのだ。


曰く


「臭い」「汚い」


・・・と。



「あぁ、やっぱそんな問題が起こったんだ・・・」
ソレがオレの正直な実感だった。
いつ洗濯したか分からないナイロンジャンバーにセーター、ズボン。
肌が弱いせいか、顎の辺りにできものが出来ている。
虫歯のために前歯が半分欠けている。
確かに、悪臭の条件は揃いすぎるほど揃っている。
実際オレも、喋っていてたまに気になることがあった。
まぁ、オレの場合は友達だからそこまで強く気にすることも無かったし、彼はそういう人間と分かってて付き合ってたわけだから別段どうこう言うこともなかったけど、サスガにコレじゃ社内での立場も悪くなるだろうし、社会に出てしまった以上「まぁそういう人間だし」では済まされない部分も多々あるというのは痛いほど感じている。
なので、先日一緒に新宿に出て、無印良品ユニクロABCマート等を見て回って一通り彼の服を見繕った。
その上で
「少なくとも同じ服を2日連続で着ない事」
「風呂には毎日浸かり汗を流す事」
「歯医者に行く事」
等を徹底するように言い聞かせた。
「当たり前のことを、当たり前にやろうぜ」
と・・・。



・・・・・・・・・



・・・・・・・・・



・・・・・・・・・



・・・そうか!コレって「脱ヲタ」だ!!



ある瞬間、オレはハタとそう感じた。
「アレはそういうことだったのか!!」と・・・。



彼の場合「服が汚かった」のが問題じゃない。
「薄汚れた格好から悪臭が漂う事で、周りの心証が悪くなっていた」のが問題だったのだ。
オレは彼を良く知っている。
彼は決して悪い人間じゃないし、誰かからアレコレ言われる類の人間でもない。
極めてマジメで、話の芯もしっかりしている。
確かに見目麗しい顔でもないし、話が無茶苦茶面白くて周りを楽しい気分にさせるような人間でもない。
その上感情もあまり大っぴらに表に出さない人間だから取っ付き辛い所もあるけど、話せば話すほど味わいの出てくる、そんな男だ。
つまり「第一印象で決められない」類の人間だということ。
逆に言えば、彼は相当に「見た目で損をしている」と言えるんじゃないだろうか。
そして、そんな彼が社会に出て自分の地位を確立していくには、どうしても「見た目」を磨く必要性があるわけだ。


そして、その「見た目を磨く」という事を考えた場合、服はそこまで重要じゃない。
清潔感がありさえすれば、それが例えユニクロだろうが無印だろうが、そんなこと全く関係ない。
むしろ「当たり前のことを、当たり前にやる」のが大切であるということ。
それは、例えば風呂に入るとか、同じ服を2日連続で着ないとか、そういった類のことだ。
つまりは、彼を見る人間の目に「不快に思われない」ようにすること。
周りを「不快な思い」にさせないだけの「社会性」を身につけること。
そして「不快に思われる」ことで彼自身が「損をしない」こと。
・・・それが最重要だということだ。



それはそのまま「脱オタクファッション」という概念にも行き着くんじゃないだろうか・・・。
つまり「得をするため」の方法論ではなく「損をしないため」の方法論。
そして、何故「損をしないため」の方法論が必要なのかと言うと、実際にソレで「損をしている」人間がいて、そしてそんな人間に不快感を持つ者が多くいるから。
今の今までオレは頭の中で分かっているつもりだったけど、改めて自分がそういう立場になってみて初めて「そうか!そういうことだったのか!!」というのが実感できた。
そう考えると、脱オタクファッションガイドで「何も足さない、何も引かない」と言われている概念も頷ける。
何も無い状態から一挙に「得をする」格好になったところで、最低限の事が出来ていなければ単なる”付け焼刃”に過ぎない。
マズは最低限「損をしない」格好から始めるのが肝要であると。
そしてソレは、周りに「不快な思い」をさせないために必要不可欠であるということ。
「損をしない」格好であれば、周りから怪訝な目で見られることも少なくなる。
そして、ソレ以上を求めるなら、ソレは当人の努力次第だ。
だから、マズはソコまでやろうぜ・・・それが「脱オタクファッション」の真髄だったんだなと、今更ながら実感できた。
とすると、今のオレはすっかり「脱ヲタ」の範疇から抜け出しちゃってるな。
ブログのタイトル変えるかな・・・・・・。



ソレにしても・・・と思うのだ。
もし彼が見目麗しかったら、そもそもこんな問題は無かったんだろうか。
「見た目で損をする社会」ってのも不条理だなとは思うけど、でも実際オレも「見た目」で人を見ちゃうコトが多々あるだけに強くは言えない・・・。
まぁ、ソコまでひっくるめて「社会性」だと言ってしまえばソレまでなんだけど・・・。